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はじめに
サブタイトルを「理系・医系」としたが、
ここでは同一人物の答案によって足跡をたどってみたい。
Aさんは中1のころから道場に通い始め、
初めは主に学校生活や家庭生活のことを書いていた。
小さいころから「お医者さんになりたい」と
漠然と思っていたようだが、
高1の終わりに進路選択を迫られると、
きっぱりと医系の道を選んだ。
そこで、作文・論文の課題は、時事的なものの中から、
医療・医学に関するものを選ぶようにした。
上記のほかにも、
「インフルエンザと予防」、「狂犬病」(感染症)、「免疫」、
「ケータイ電磁波の影響」、「口蹄疫」について、
また、その間に
「COP15」(地球温暖化対策会議)、「核兵器の廃 絶」
などについても書いている。
医療問題を医学の世界に限定せず、
広く社会の中でとらえるようにしたわけだが、
書きぶりにも変化が現れた。
上記の@〜Bに見られるように、文章が緻密なのである。
緻密さは医師の要件である。
優れた医師になるであろうことが予感される。
結果として、
3つの大学の医学部に現役合格を果たした。
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@ 「バイオテクノロジー」
はじめの答案 | 添削例・諸注意 |
私は今、現代社会の授業でクローンについて学んでいます。クローンは生物学的に「同一の遺伝子をもつ生物」と定義されています。遺伝子の本体はDNAでできており、DNAはデオキシリボースという糖・塩基・リン酸を一つずつ持つヌクレオチドという一つのかたまりを基本単位とし、それが多数つながったものです。DNAの塩基にはチミン、アデニン、シトシン、グアニンという4種類が存在し、それらの配列によって遺伝子の特徴が変わってきます。また、DNAは二重らせん構造という形で存在します。これは、チミンはアデニンに、シトシンはグアニンに結合すると決まっていて、結合したもの同士がつながり、ねじれた状態になっているため、そう呼ばれています。人間には23本の遺伝子が存在しますが、23本全ての遺伝子が二重 らせん構造をとっています。 人間の遺伝子数は「2n=46」と表します。子どもは父親からn、母親からnもらって、2nとなります。兄弟姉妹は同じ遺伝子をもらっていますが、遺伝子の組み合わせは6,400億通りあるので、兄弟姉妹同士で全く同じ遺伝子をもつ可能性は極めて低くなっています。つまり、クローンになることはほぼないに等しいのです。しかし、例外があります。一卵性双生児です。双生児には一卵性と二卵性がありますが、一卵性とは、一つの受精卵が成長していくうちに二つに割れてしまうことで、二卵性とは、受精卵が同時に二つできてしまうことです。二卵性の場合は遺伝子が違うため、全然似ていない子どもが生まれますが、一卵性は遺伝子が全く同じなので、クローンの状態で生まれてきます。しか し、一卵性といっても、育つ環境によって、性格や考え方は異なってきます。 今日のバイオテクノロジーは、人間が遺伝子の操作をできるところまで進んできました。その例がデザイナーチャイルドです。これは、受精卵の遺伝子をいじり、親が好んだ子どもを産めます。例えば、両親とも日本人であっても、子どもの髪はブロンド、目はブルーといったふうにできます。この遺伝子操作を行うことによって、受精卵から病気の遺伝子を取り除くこともできます。まだ多くの国ではこれが認められていませんが、世界で認められるようになったら、障害児が生まれなくなるかもしれません。 バイオテクノロジーの進歩によって私たちの生活は豊かになるかもしれません。しかし、その反面、バイオテクノロジーを使うには、多額の費用がかかるため、上級層の人しか利用できず、金銭面以外での格差を生む可能性があります。ビデオで見たアメリカ人女性の場合、いくら自分の遺伝子と全く同じクローンを作っても、同じなのはDNAの塩基配列だけで、性格も考え方もその女性とは異なる人間ができてしまいます。だから、クローンが残っても、その女性が残ったことには なりません。 (以上、約1500字) | ← ……グアニンの4種類が…… ← ……存在しますが、その全てが二重らせん構造を…… ← 受精卵の遺伝子を操作することによって ← 多くの国ではまだこれが認められていませんが、 ※ バイオテクノロジーはどう利用するのがよいか。 |
第4段落までは、授業の内容を
よくぞこれだけ理解したと思えるほどに、よく書けている。
第5段落までは表現を若干直せばよい程度なので、
結論部だけを書き直すことにする。
書き直した答案 | 添削例・諸注意 |
〔 結論部ー第6段落 〕 バイオテクノロジーを誰でも利用できるようになったら、病気の遺伝子を取り除くことができるので、人間社会に大いに役立つでしょう。しかし、どのようにでも操作できるからといって、親の好みで子どもを作るというのは、道徳的に許されることではないでしょう。そう考えると、バイオテクノロジーは何より生まれてくる子どものことを考えて利用されるべきだと思います。 |
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A 「DNAと遺伝子」
この小論は前項の「バイオテクノロジー」の姉妹編として書かれている。
前半(第4段落まで)は、自分が理解したことがらの論述であるから、
知識の整理をするには大いに役立とう。